Scene.24 伝説の続きを探すのさ!
高円寺文庫センター物語㉔
「芥川賞作家の長嶋さんがお二人の大ファンで、サイン会にふつうのお客として来てましたよ。お話したら『こんな貴重な機会を作ってくれて本当にありがとう』と感動していました。
打ち上げでは、いましろさんは釣りの話をたくさんしてました。気さくで全然引っ込んでる感じじゃないんだとびっくりしたの。なんていうか、つげ義春さんのような厭世作家かと思っていたから・・・・。
とにかくいろんな人が『本当にあの伝説の人たちを見れるのか?』という感じで、ちょっとすごい雰囲気だった印象があります。ほかでは見たことないサイン会でした!」
「そっか・・・・京子っぺ! まった、おっぱいがあたってるっつうの!」
最も哀しい万引き・・・・
「店長! あの女の子、万引き感ありありなんだけど」
「OK、わかった。任せとき!」
そっと、近づいてバッグのなかを覗けばスリップが差し込まれたままの絵本が2冊。はぁ、こんな小さな女の子がやるかなっと哀しくなる。
レジに行かずに店の外に出たので、「お嬢ちゃん、バッグの中の絵本なんだけどね。お金を払わないで持って行かれちゃ、本屋さんは困るんだ」
事務所まで来て貰って、いろいろ訊ねれば素直にハキハキ答える感じのよい子。どうして、こんな子が万引きするんだろうと「なんでさ、お金を払わないで帰るの? 泥棒になっちゃうんだよ」
「はい。どうしても読みたくなって、お小遣いを持ってなかったんです。もう、二度としません!」
小学生の女の子の万引きは初めてだったけど、泣くこともなく自分の住所や電話番号も悪びれずに答えてくる。
なにか腑に落ちなかったが、電話をしたら母親がすぐに来た!
「今回は親御さんにも来ていただいたので、交番に届けずに帰って結構ですが・・・・」
と言ったときに、親子が見交わした視線は常習犯と思えた。そのアイコンタクトを見てしまった瞬間、奈落に落ちた。
抱えている仕事は山ほどある。そんな親子の闇に、もう関わりたくないと思った・・・・店長、失格。
万引き犯を捕まえた後ほど、気分の良くないことはない。
「店長。なんで小さな出版社が、本屋で差別されることがあるんですか?!」
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